EV・家庭用蓄電池等を最適に組み合わせて再エネの調整力に
東大研究部門ESIと研究
2024年08月26日
株式会社エナリス
株式会社エナリス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:都築実宏、以下、エナリス)はこの度、エナリスを含む参画企業18社と東京大学生産技術研究所とで『エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門(ESI)』第Ⅲ期(2024年度〜2026年度)を設置いたしました。エナリスは2024年度、EV(電気自動車)をはじめとする低圧リソースについて、調整力として供出するための最適な組み合わせロジックを研究いたします。エナリスがESIの研究に参画するのは2期連続となります。
■背景
再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化に向け、再エネの不安定な出力を補う調整力※1を正確かつ素早く供出することが課題となっています。調整力となる電源として注目されているのが、走行時に排出する二酸化炭素の量がきわめて少ない電気自動車(EV)や、太陽光発電(PV)導入家庭に併設された家庭用蓄電池といった低圧リソースです。電力ユーザー側が所有するEV蓄電池や家庭用蓄電池は、IoT制御により機動性よく電力需要の調整に活用できる上、需給調整市場において2026年度から取引が可能になる見込みであることから、調整力を生み出すリソースとしての期待がますます高まっています。
■低圧リソースが抱える調整力としての課題
低圧リソースの特徴は、調整力として活用する以外に本来の別の用途があることです。例えば、EVは移動手段、家庭用蓄電池は蓄電した電力の夜間や非常時の活用です。この本来の目的を妨げることなく調整力を供出するためには、使用されていない時間帯や余力を把握し、過不足を補う仕組みを作っておくことが重要です。特にEVは、走行距離などにより蓄電残量が変化するほか、停車していてもV2H※2に接続しているとは限らないことから、調整力として供出可能な量を予測することが難しい点が課題となっています。
■研究内容
こうした課題を解決するため、エナリスは早くから低圧リソースを調整力として活用する実証事業に取り組み、EV数十台を対象に、調整力に活用できるEVの割合や量、時間帯等について実証と研究を行ってきました。
今年度のESIとの研究では、研究対象とするEVの規模を拡大するとともに家庭用蓄電池やヒートポンプ給湯器などを追加。ESIが保有するESIA※3を活用しながら、供出可能量と経済性の観点から最適な低圧リソースの組み合わせをシミュレーションします。さらに、より大きな調整力に仕立てあげるアグリゲーション方法についても研究します。
具体的には、「家庭が所有するリソースの種類」「敷地内の電力需要の有無」「EVが敷地に戻ってきているか」「EVの走行距離」「EVがV2Hに接続している時間帯」等、敷地内における電力ユーザーの生活パターン等から見出した電気の使われ方の法則と複数の要素を掛け合わせ、供出量と市場取引の際の収益性の両方が高くなる低圧リソースの組み合わせを調査・研究 します。
今年度の研究の成果は、2024年度末に開催されるESI報告会で発表する予定です。
エナリスは、引き続き産官学の連携を強化しながら、再エネ主力電源化、脱炭素社会の実現に貢献する新しい電力システムの構築に挑戦します。
〔※1〕 調整力: 電力の周波数を保つために一般送配電事業者が電力の需要と供給のバランスを維持するために調達する電力
〔※2〕 V2H: Vehicle to Homeの略称。EV等が搭載するバッテリーに貯めている電力を同一敷地内の建物で使えるようにする機器
〔※3〕 ESIA(ESIアグリゲーション)モデル 複数の需要と多数の 需要家機器を有するアグリゲーターがバランシンググループ(BG)を組成し、市場から電力を調達する際の行動をモデル化しており、DR リソースの集約の効果、市場活用の効果、リアルタイム運用 によりインバランス負担を解消する効果が検証できる
ESIの概要 https://www.esisyab.iis.u-tokyo.ac.jp/
2018年1月に第Ⅰ期が設置された東京大学生産技術研究所 エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門(ESI)は、電力/エネルギーシステムにおいて、全体システムの需給運用・設備計画、個別システム・技術の運用・制御について、開発・価値評価・導入検討を行い、価値評価、および技術・制度設計の考え方を確立している。また、これらを実施する評価ツールを開発し、それらを用いた電力/エネルギーシステムの検討・提案、人材育成を行っている。ESIA〔※3〕 はESIが保有するツールの1つ。
エナリスの会社概要 https://www.eneres.co.jp/
auエネルギーホールディングス株式会社の子会社、電源開発株式会社(Jパワー)の関係会社。2004年創業以来培ってきた需給管理のノウハウを基盤に、エネルギーの効率的な利用を支える各種サービスを提供。2016年より経済産業省のVPP実証事業に取り組み、2019年にはIoTによって分散型電源を一括制御する独自のVPPシステム基盤(DERMS)を開発し2020年には「VPPプラットフォームサービス」の営業開始。2018年からDRサービスとして電源Ⅰ´に取り組み、2021年にはDRサービスに節電還元サービスを追加。2022年4月、特定卸供給事業者(アグリゲーター)第1号に認定。現在ではアグリゲーターとして容量市場、需給調整市場(一次調整力、三次調整力①、三次調整力②)への供出を行っている。