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24時間365日、再エネだけで賄い続けることはできるのか!?24/7CFEへの挑戦

2024年12月13日

気まぐれな再エネと共存する方法

11月28日、企業訪問でオフィスに来てくれた中学生と再生可能エネルギー(再エネ)について話す機会がありました。

「再エネって天候に左右される気まぐれな存在なんです。だから安定的に発電してくれる火力発電所などと組み合わせながら、日本に必要な電力を補っているんですよ」
と説明しながらこんな質問。

「どうすれば気まぐれな再エネでも、もっといっぱい使えるようになるかな?」

しばしの沈黙後、ある生徒が小さな声で答えました。
「貯めればいい」

この答えを聞いた私は内心、「狙い通りの答えだ!」と思い、
「そうだね。ではどうやって貯めますか?」

再び沈黙。
次の沈黙がなかなか破られないことが、私には意外でした。
貯めるといえばバッテリーでしょ、と私は思い込んでいたからです。

なかなか手が挙がらないまま沈黙が続くので、私が“たねあかし”。
「みんなもスマホ用に持っているかな?小さなバッテリー」。

「あ~」と発見したかのような反応を見せる中学生。

この時、「しまった~」と思いました。電力を貯める方法は蓄電池だけではないかもしれません。
“現在は”蓄電池が手段ですが、“将来”、未来の大人たちはもっといい方法を発見してくれるかもしれないのに。

そもそも、気まぐれな再エネを目いっぱい活用する方法は“貯める”だけとは限りません。
使う側の人間が、気まぐれな太陽に合わせて電気を使う時間を後回しにするなど、行動パターンを変えるという方法もあります。タイムシフトもその一つ。

人間の行動が柔軟であれば再エネともっと上手に共存できるかもしれないのです。
そのためには、私も柔軟な発想を持って中学生たちと対話しなければいけなかった!と思いました。

チャレンジングな取り組みが始まる

いま、電力業界では24/7CFE(トゥエンティーフォーセブン カーボンフリーエネルギー)※1というチャレンジングな取り組みが始まっています。

24時間、週7日、365日、1時間単位で再エネの需要と供給のバランスを一致させようというものです。

チャレンジングという所以は、まだ誰も達成していないから。

非化石証書などで“実質再エネ100%”を賄う企業はあるものの、証書を使わず、1時間単位で毎時間、電気の需要を再エネで賄っている事例はまだないんです。

でも、24/7CFEの取り組みは、多くの企業に広がっていきそうです。

当社事業企画部の酒井達也によると、「温室効果ガスの算定・報告における国際基準である『GHGプロトコル』が、24時間365日、1時間単位の考えを元に基準改訂を検討しており、そうなれば、『GHGプロトコル』基準を元に評価・認定しているCDPやSBT、RE100等の規定も変わることが想定され、当然、各イニシアチブに賛同している多くの企業が影響を受けることになります」と。

では、24/7CFEの実現に向けてどうすればいいのか?

「目下、再エネだけで24/7を実現する上で重要なことは、任意のタイミングで再エネを貯めて放電することが可能な「蓄電池」を活用すること」と話す酒井は、「さらに蓄電池に貯められたものが再エネであることを裏付けることが必要です」と言います。

やはりチャレンジングな取り組みだけあって、条件は厳しいようです。

ただ、エナリスは実証を通してブロックチェーン技術を磨いてきました。このブロックチェーンの応用で、“今利用した電力がいつどこで発電された電力なのか”を記録して証明することができ、“蓄電池に貯めて放電した電力がいつどこで発電された電力なのか”も証明することが可能になります。

しかしながら、「系統に接続された蓄電池に蓄電されている電力が再エネであることを公的に証明する手法がないなど、制度面では大きな課題がまだまだあります」と酒井が話すように、私たちが取り組まねばならない課題は山積みです。

とはいえ、再エネ主力電源化は地球全体の課題。

エナリスもこのたび、『24/7CFEコンパクト』※2に加盟し、再エネ主力電源化に貢献するイノベーションを生み出すことを改めて表明しました。

既存の手法だけに頼らず、行動も発想も柔軟に、新しいイノベーションを生み出していきたいと思います。

※1:「24/7CFE(トゥエンティーフォーセブン カーボンフリーエネルギー)」とは、米グーグルが2018年に提唱した概念。その後、国連主導で「24/7CFEコンパクト」という国際的な枠組みが発足し、世界全体で160を超える企業・団体が加盟している。

「24/7CFEコンパクト」は5つの原則を掲げている(◆)。アワリーマッチングの概念である1時間単位で需給を一致させることに加え、需要家の設備と同一の電力系統で調達すること、あらゆる技術を活用すること、新世代の電力を実現すること、化石燃料由来の電力が多い時間帯へ対応すること。非常に厳しい条件のため、達成した企業は現時点で存在しない。

 ◆24/7 CFE Compact が掲げる5つの基本方針
  ✧ カーボンフリー電力の厳格な同時同量(Time-matched procurement)
  ✧ 同一系統内でのカーボンフリー電力の調達(Local procurement)
  ✧ 技術包括性(Technology-inclusive)
  ✧ 新しい発電の実現(Enable New Generation)
  ✧ 電力システムへの影響最大化(Maximize System Impact)

※2:プレスリリース
国連が主導する国際イニシアティブ「24/7 Carbon Free Energy Compact」に加盟
https://www.eneres.co.jp/news/20241202.html

写真はすべて©ENERES
取材・文責 エナリス広報部

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