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活動報告

再エネの調整力、揚水発電所に学んだ発想の転換

2024年05月31日

ためて時間をずらす「タイムシフト」

テレビが録画できるようになったのは今から50年くらい前だそうです。
メーカー各社がビデオデッキの開発にしのぎを削り、テレビ番組などをリアルタイムに視聴しなくても、都合のいい時に視聴することができる時代になりました。
このように、ためる(録画)ことで自分の都合に合わせて視聴することを「タイムシフト」と言うそうです。

“ためて”おいて、自分の都合に合わせて“実施する”―――。
電力業界では蓄電池がこれを実現してくれます。
そして最近私たちが見学してきた揚水発電所も、タイムシフトを実現する大型の蓄電池のようなものでした。
今日はそんな発電所見学のようすをお届けします。

揚水発電所とは

揚水発電所では、発電所の上部と下部にダム(調整池)をつくって水を貯め、上部から下部に水を流して水車を回転させて発電します。
下部に落とされた水は、電気を使いながら水車を逆回転させることで水をくみ上げて、上部の貯水池に戻されます。

この仕組みのどこが“タイムシフト”か・・・。
それは、余ってしまう電気を使って水をためて(=電気を使って上の調整池に水をくみ上げる)、電気が必要なときに上部から下部の調整池に水を流すことで電気を作り出すからです。
例えば、太陽光発電が普及する現在は、電気が余りがちな昼間の時間帯に水をくみ上げることが増えているのだそうです。

つまり、「ダムに水をためる」ことで、“都合のいい時間”(需要のある時間)に電気をつくったり、“都合のいい時間”(需要が少なく電力が余る時間)に電気を使ったりして、電力の需給バランスの調整と安定供給に貢献しているのです。

これは蓄電池でも実現できますが、揚水発電は、規模も大きく、再生可能エネルギーの調整力にも活用できることが魅力。

実際の揚水発電所の写真から、その規模を感じていただければと思います。

揚水発電の全容を見るため、ゴンドラとバスで移動しまくる

見学したのは1週間前まで開業していたという新潟県の苗場スキー場近辺に位置する、J-POWERの奥清津発電所・第二発電所(通称、OKKY)。
東京から北西に約200kmの位置に広がる苗場高原や田代高原に、発電所と2つの調整池は位置します。
奥清津発電所は1978年に、奥清津第二発電所は1996年に運転開始しました。
日本で2番目に大きな揚水発電所とされ、出力規模はトータルで160万kW。
一般家庭が乗る電気自動車のバッテリーに置き換えると約26万台分、家庭用蓄電池だと約40万台分に相当します。

▲上部のカッサダム

上の写真は、上部のカッサダム(調整池)を目の前に見たようすです。
苗場スキー場が運営するゴンドラで行く山頂(田代高原)に作られたダムです。
コンクリートではなく岩盤で川の水を堰き止めたダムのせいか、一見すると自然にできた池のようにも見えます。

▲下部の二居ダム

ゴンドラから見えたのは、下部に位置する二居ダム。
深い緑の木々も、エメラルドグリーンのダムも、とっても綺麗でした。
電気を作り出すために上から降りてきた水は、ひと仕事終え、下のダムで穏やかに休んでいるようにも見えます。

こちらは、二居ダムを間近でみた写真です。
カッサダムは東京ドーム10杯分、二居ダムは東京ドーム15杯分の水をためることができるとか。
発電所では、定期的に水質や環境を汚染することがないかのチェックを行っているそうです。

ダムを行き来する水の通り道である水圧鉄管は、山の斜面に設置されています。

▲今回の見学会は、エナリス、J-POWER、auリニューアブルエナジーの30名で参加しました。

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、集合写真の後ろに移る山の真ん中に白いものが2つ見えませんか?
これが直径5メートルの水圧鉄管です。
山の上にあるカッサダムと二居ダムを行き来する水の通り道です。
上から下に流して発電する際は、全台フル発電運転(160万kW)の場合で7.5時間にわたって電気を作り出すことができるそうです。
定期的にメンテナンスは、水圧鉄管の中の水をすべて抜いて、人が中に入って行うんだそうです。

巨大な揚水発電所を上から下まですべての施設に移動するには、ゴンドラ、バス、徒歩で数時間かかり、その壮大さを実感です。

発電機の仕組み

発電所の中にも入ってみましょう。
発電所の主な設備は、発電機とポンプ水車。
ポンプ水車が、上から流れる水を受けて回転し、そのエネルギーを発電機で電気エネルギーに変換します。
発電所の中では、流れてきた水がどのような経路で水車に当たって発電するのかを模した模型や、発電機の最上部や主要変圧器、2つの発電機の上部や発電機室、水車室などを見ることができました。

▲発電の仕組みに耳を傾ける参加者たち

見学者の中には、稼働が始まり発電機上端部にある運転中を表示するランプが光りだす場面に遭遇できた人も!

発電所の建物の外には、水路建設に使った作業坑がそのまま残っていました。

▲水圧鉄管に続く旧工事トンネルの中

発想の転換が生み出した揚水発電

揚水発電所は、「蓄電池のようにためる役割を果たせる発電方法はないか」という発想から生まれたといわれます。
無駄になっている電気を使って水をためることで、必要な時に発電を行うという、発想の転換に脱帽です。

自然の恵みで成り立っている施設でもあるため、発電所の方々が日々、環境や水質への影響に気を配っていることも忘れてはならないと思いました。

エナリスは、家庭用蓄電池や電気自動車などを活用する新しい技術の開発に挑戦していますが、揚水発電所を見学して、これも電力の「タイムシフト」への挑戦なのかなと感じました。

次はどんな発想の転換から新しいアイデアを生み出せるか。
楽しみながら取り組んでいきたいと思います。

写真はすべて©ENERES

文責 エナリス広報部

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