AI予測は“職人技”、AI技術向上に挑戦中
2024年03月12日野球で思い出したデータのこと
最近興奮した出来事の一つが、先日、出前授業に行ったある小学校で見せてもらった写真のグローブ。
なんと、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手から贈られたものでした~!!!
野球と言えば思い出しました。古い話にはなりますが、日本で野球とデータがとりわけ注目されたのは、“ID野球”を重視した野村克也元監督がきっかけだったようです。
現在、日本のプロ野球界ではAI技術やIoTなどのICT技術を積極的に導入しており、試合や練習で得られた様々なデータを活用しAI技術による戦略策定や選手のコンディションづくりに役立てているそうです。
ちなみにメジャーリーグの大谷選手は、今季からAI技術を搭載した最新の打撃マシンを使用し、バッティングに生かしているそうです。
再エネが広がってもデータは重要
ところで、データが重要なのは電力業界も同じ。
例えば、
「このくらいの規模の工場であればこういう電気の使い方をするだろう」
「家庭は、こんな天気の休日はこんな電気の使い方をするだろう」
お客さまがお使いになる日々の電力使用データを積み上げ、予測に生かしています。
地球温暖化の解決に向けて期待されるが発電量がお天気に左右される再生可能エネルギー。
この予測にもAI予測技術を活用しようとしています。
万能じゃない!? 人間を助けてくれるAI
お天気に左右される太陽光の発電量を予測できるなんて、AIは“すごい”のか? みらい研究所の納多哲史に聞きました。
「発電量の予測に限りませんが、AIの予測精度は、現時点では人間と同じくらいの精度のものもあれば人間よりも少し優れているものもあると思っています」
さらに、同研究所の星野光保に聞いてみると、
「前提として、AIは万能じゃないと思ってるんですよ」
AIが万能じゃないとは! 脅威とすら思っていたので、ちょっと意外な答えでした。
「それでも、AIは人間の予測を手助けしてくれる。だから我々は、今は電力の需要予測に特化してAIを活用しています。10年経ったら“もっと違うことができる”でしょうね」
AI予測技術の向上に向けて世界と競い合う
“もっと違うことができる”に向け、みらい研究所は、日々の業務だけでなくAI予測技術を競い合うコンペティションに参加して技術を磨いているのだそうです。
コンペティションとは、例えば世界中から参加者が集まる「kaggle」※1や、国内向けの「SIGNATE」※2などです。
コンペティションでは、提示された共通の課題に対して共通で与えられるデータを使って、参加する統計家やデータ分析家が最適モデルの構築を競い合うのだとか。
課題は電力のみならず、睡眠や金融などさまざま。
そして、朗報が! なんと、SIGNATEが先日開催したコンペティション(1013チーム中)で、
当社みらい研究所から個人参加した髙橋大輔が18位の銀メダル、
星野・納多・宮下の3名がチームで参加して85位の銅メダルを獲得しました。
インタビュー SIGNATEやkaggleのコンペティションに参加しての感想は?
星野「コンペティションに参加して良かった点は、とりわけkaggleでは世界の分析家らとつながること
ができることですね。コンペを通して自身のAIスキルの向上と領域の拡大を実感しながら、業務
へのフィードバックが可能になると思っています」
髙橋「長い目でメダルを取ることを目指していましたが、こんなに早く獲れるとは思っておらず驚いて
います。エナリスのAIは十分に競争力があるということが確認できてよかったです」
インタビュー 大変だったことは?
髙橋「何十回と試行錯誤しても結果に結びつかないことがあります。さらに実験と結果の関係を見失
い、手戻りせざるを得なくなこともありました。通常業務も行う中、時間的な制約が特にしんど
いと思いました」
「全員に共通に与えられるデータを、どういう形にしてAIに”食べさせる”かという点にも苦労しまし
た。”生のまま食べさせる”よりも意味や枠組み、背景や構造を理解させるように”料理”してやると
予測の精度が向上します」
なるほど。ただ情報を読み込ませるのではなく、言ってみれば“AIが消化しやすいように、頭が働きやすいように、人間が情報を分解・整理”してから読み込ませるのが大事なんですね。
AIに発揮される人間の“職人技”
話は戻って、件の野村元監督。口癖は「(投げる)その一球に根拠はあるのか?」だったとか。
データの分野は少し違いますが、
「自分たちのAI予測に根拠があるのか?・・・」
こう聞かれたらどう答えればいいでしょう? AIが出した答えの確かさは誰も言えないから…。
でも、AIになぜそれを食べさせたのか?なぜ情報をそう分解したのか?ならば説明できるだろうと思えてきました。
AIエンジニアが、データのもとになっている事象、時には経済や社会、人の動きなどあらゆるものをじっくり観察しているからこそできること。
ある意味、“職人技”なのではないでしょうか。
これからは、AIが出す答えだけでなく、AIに取り組む人間の“職人技”にも注目していきたいと思います。
<参考>
※1:https://www.kaggle.com/competitions/child-mind-institute-detect-sleep-states
※2:https://signate.jp/competitions/1325
写真はすべて©ENERES
文責 エナリス広報部