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5G+MECでリアルタイム制御に挑戦!

2022年03月23日

エナリスは2022年2月17日に、KDDIとともに取り組んでいる「5G+MEC」環境を活用したVPP実証実験の成果を発表しました。(https://www.eneres.co.jp/news/20220217.html

VPP、5G+MEC。なにやらムズカシイですよね。

今回は、2021年10月に実施されたこの実証実験の様子を交えながら、実証の目的や成果、そして今後の展開を分かりやすく解説いたします!

目次

「5G+MEC」とは

まず読み方は、「ふぁいぶじー・めっく」と読みます。

5Gは、なんとなく分かる人が多いでしょうか。「5th Generation」の略で、「第5世代」のことを指す次世代の通信規格です。 5Gが普及すれば、今まで以上にさまざまなモノがネットワークに接続され、生活のあらゆるところで通信が行われると予測されています。

そしてMEC。MECはマルチアクセスエッジコンピューティング(Multi-access Edge Computing)の略称で、今後の5G時代での活躍が期待されているネットワーク技術です。ユーザー端末により近い場所(エッジ)にデータ処理を行うコンピューター(MEC)を配備することで、ユーザー端末とより近くで通信が行われるため、特に「低遅延(※)」が実現できると期待されています!

※低遅延・・・通信の遅延をできるだけ軽減して、よりリアルタイムな通信をすること。

G+MECのイメージはこんな感じ!現在の仕組みと5G+MECのイメージを比べてみましょう

5G+MECイメージ

【現在の仕組み】

▶課題1 ユーザー端末の中に高性能なデータ処理機能を持たせるため端末価格が高くなる

▶課題2 ユーザー端末~データセンター間で必要な通信・処理に、携帯電話回線(LTE)や様々な通信網を経由するため遅延が大きくなる

【5G+MEC】

1. 通信回線は5Gを使用

2. データセンター~ユーザー端末の間にMECが存在

この2つの特徴を活用し、現在の仕組みが抱える課題を解決!

▶解決1 データ処理をユーザー端末からMECに移行するため、ユーザー端末の価格を抑えられる

▶解決2 ユーザー端末~データセンター間で行っている通信・処理をMECと書かれた場所で折り返すことができ、5Gの通信回線のみでやり取りができるため低遅延。さらに、データセンター~MEC間のデータ通信量を減らすことができるためネットワーク効率化にもつながる

つまり、5Gデータ通信の環境MEC技術端末低コスト&低遅延&ネットワーク効率化が実現できるというわけです。

これを「分散型エネルギー制御にも活かすことができるのか?」というのが、今回の実証実験のテーマです!

で、実証項目はこちらの2点

  1. 周波数制御を想定した高速制御実証
  2. 同一5G基地局収容端末に対するエリア協調制御実証

実証実験の様子を見てみましょう。

いざ潜入!!

KDDIラボ
▲実証を行うKDDIさんのラボ@虎ノ門

オシャレなウッド調の空間でまるでカフェのような雰囲気です。ここにいるだけでクリエイティブな何かが生まれそうで、なんだかワクワクしてきました(笑)

5G基地局
▲KDDIさんラボ内で発見した5Gの基地局(※)

※5Gの基地局とは、5G通信を行うための装置や設置されている場所のこと。現在KDDIでは利用エリアの更なる拡大に向け基地局の建設を進めている状況とのこと。通信環境抜群の中、実証をさせていただきます。

実証セット
▲実証をするために用意された実証セット

5つの白いボックスは、蓄電池(容量20kWh、30kWh、40kWh、50kWh、60kWhの5種)を模しており、充電中は青、放電中は赤のランプがつきます。

「周波数制御を想定した高速制御実証」では、「5G+MEC」と「4G+従来のクラウドサーバ」のそれぞれの環境下で、蓄電池制御にかかる時間の違いを確認しました。

伝送遅延時間の比較

その結果!

  • 4G:100~200ms(0.1~0.2秒)
  • 5G:50ms程度(0.05秒程度)

と、5Gでは安定した高速通信を確認することができました。

「同一5G基地局収容端末に対するエリア協調制御実証」では、同じエリア内にある蓄電池をまとめて制御し、「エリアでのDR」が達成できるかを検証するものです。

個別制御とAIで協調制御
充放電電力実証データ

その結果!

グループ内で端末ごとの不足分を補い合ってトータルで見ると正確な制御に成功!これは分散型リソースを制御する側の事業者(リソースアグリゲーター、RA)とって重要なカギになってくるとのことです。

実証でわかったこと

5G環境で、リソースの高速制御を実現!

需給調整市場をはじめ、今後は応動時間の速い調整力が求められるように。「分散型エネルギー制御から生み出した電力」の商品価値を上げるには、応動時間を速めることが重要!

エリア協調制御で、低遅延により正確な制御を確認!

「分散型エネルギー制御から生み出した電力」の商品価値を上げるもう一つのポイントは“正確性”。一つのリソースでは変動しやすくても、リソースを束ねて、お互いに素早く補い合える仕組みを作ることが重要!この“素早く”を支える技術が「5G+MEC」というワケ

今後、エナリスの事業にどうつながっていくのでしょうか?

エナリスが、エネルギーのプラットフォームのリーディングカンパニーを目指すにあたってネットワーク環境の向上は切っても切り離せません。例えばFALCONⅡSYSTEMの端末制御や、VPPサービスの予測・制御、EV車の分散型電源制御に、こういった通信技術が活用されます。

5G+MECによって実現する通信の“低遅延”は、エナリスが取り組んでいる「分散型エネルギー制御によって生み出された電力(調整力)」の価値を上げ、さらに新しい価値を生み出す可能性を秘めています。また、端末側にあらゆる機能・性能を搭載するエッジコンピューティングでは、端末が高価にならざるを得ず、お客さまの費用負担が大きくなることが課題でしたが、それも解消されることが期待できます。これからも実サービス化に向けて研究を続けていきますので、ご期待ください!

エナリスみらい研究所メンバー

エナリスみらい研究所/不破 茂秀コメント

「今回の実証は5軒のお客さま宅を模擬する小規模なものですが、得られた結果をもとに更なる実証を積み重ねることで、世の中を一変させるような大規模サービスを生み出す可能性を秘めています。技術検討を加速したいと思います。」

エナリスみらい研究所メンバー
▲10月28日の実証実験に参加したエナリスみらい研究所のメンバー
(左から、山口純、星野光保、不破茂秀、小林輝夫)

写真はすべて©ENERES

取材・文責 エナリス広報部

※集合写真の撮影時のみ、マスクを外しました。実証実験や取材の間は、マスクを着用し、換気、社会的距離の確保など感染対策を行いました。

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