再エネの出力制御回避へ、ローカルフレキシビリティの研究を開始
エナリスと北海道大学
2024年07月29日
株式会社エナリス
国立大学法人北海道大学
株式会社エナリス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:都築実宏、以下、エナリス)および国立大学法人北海道大学大学院情報科学研究院(所在地:北海道札幌市、研究院長:近野敦、以下、北海道大学)は2024年度、ローカル・配電系統における混雑の緩和に分散型エネルギーリソース(DER)を活用する研究を共同で実施します。
■課題からくる研究背景
再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化が推進される中、天候によって出力が左右される再エネ発電量に電力需要が追いつかないために系統が混雑する状態が発生し、再エネの出力を抑制せざるを得ない“再エネ出力制御“の頻発が問題になっています。現在の系統混雑の原因は、“系統全体”の需要と供給のバランスが崩れることですが、今後は太陽光発電設備の設置場所に近い系統である“ローカル・配電系統(図参照)”から局所的に混雑が発生すると想定されています。
ローカル・配電系統における混雑緩和を目的に、発電量・需要量を柔軟に調整することは「ローカルフレキシビリティ」と呼ばれます。このローカルフレキシビリティに、今後導入拡大が見込まれる電気自動車(EV)などのDERを活用するスキームを構築することは、再エネ出力制御の回避だけでなく、将来的に起こりうるローカル・配電系統を中心とした送配電設備の増強の回避にも貢献できると考えています。
■研究内容
本研究では、ローカル・配電系統において、“いつ、どこで局所的な混雑が起きるか、再エネ余剰が発生し得るか”について解析します。その上で、そのエリアの再エネ余剰をEVなどのDERに吸収させることによってローカル・配電系統の混雑を緩和する手法を検証します。ビジネススキームや経済性に関する調査も併せて実施する計画です。実施にあたり、エナリスはローカル・配電系統における混雑の予見性を高める技術やアグリゲーション実証で培った‘群管理/群制御’技術を、北海道大学はこれまでの研究で培った系統混雑の解析をはじめとする電力・エネルギーシステムの各種技術を活用します。
■エナリスと北海道大学の知見
エナリスは、2021年~23年度の経済産業省の実証事業である「再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業」及び「DERアグリゲーション実証事業」(補助金執行団体:一般社団法人環境共創イニシアチブ)において、再エネの発電予測精度向上を図るとともに、低圧リソースを集約してリソース群として制御する“群管理/群制御”を実証し十分な制御精度が得られることを示しました。この“群管理/群制御”を面的に点在している低圧リソースに用い、系統混雑発生箇所のリソースに対してのみ制御することでローカルフレキシビリティをより効果的に機能させることが可能となります。
北海道大学は、電力・エネルギーシステムの運用・制御・計画・解析技術を研究開発しており、近年では特に、自然変動型の再生可能エネルギー発電との協調を意識した新しい電力システムの創造に取り組んでいます。
エナリスおよび北海道大学は、引き続き産官学の連携を強化しながら、再エネ主力電源化、脱炭素社会の実現に貢献する新しい電力システムの構築に挑戦します。
▶エナリスについて
エナリスは、2004年創業以来培ってきた需給管理のノウハウを基盤に、エネルギーの効率的な利用を支える各種サービスを提供しています。2016年より経済産業省のVPP実証事業に取り組み、2020年には「VPPプラットフォームサービス」の営業を開始。2018年からDRサービスとして電源Ⅰ´(調整力公募)に取り組み、現在は、アグリゲーターとして需給調整市場に参加しています。auエネルギーホールディングス株式会社の子会社、電源開発株式会社(Jパワー)の関係会社。
会社HP(https://www.eneres.co.jp/)
▶北海道大学について
北海道大学は、大学院に重点を置く基幹総合大学であり、その起源は、1876年に設立された札幌農学校に遡ります。その後、帝国大学を経て新制大学に至る長い歴史の中で、「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」及び「実学の重視」という教育研究に関わる基本理念を掲げ、培ってきました。これらの基本理念を再確認するとともに、社会に対する説明責任を認識しつつ、知の創成、伝承、実証の拠点として発展していきます。
北海道大学HP(https://www.hokudai.ac.jp/)